• 兄さんの心臓が、どく、どく、と脈打っている。目を瞑って、鼓膜を震わせるその音だけに感覚を研ぎ澄ませていると、まるで地の底から響いているような錯覚すら覚える。

    どくり どくり

    兄さんにはこの音が聴こえるだろうか。共有したくて、兄さんの両耳を自分の掌で塞ぐ。

    聴こえるかな。どくり、どくりって音。俺ね、この音は、俺たちが母さんのお腹の中で聴いていたのときっと同じ音だと思うんだ。すごく懐かしい気がする。

    メトロノームみたいに規則的に激しかったそれは、やがて緩やかになっていく。かすかな振動だけが伝わってくる。黙っていると、呼吸すらも闇に溶けていきそうな夜だった。そうして俺たちはまた眠りにつく。

    明日も良い日でありますように、と祈りを込めて、お互いの音がひとつになるまで身を寄せあった。