【第62回】商品企画・開発の新たな視点をどこに見るか
仕事上役立つ情報やヒントはあらゆるところにある。
毎日の生活習慣でもある新聞や雑誌、読書、テレビなど多岐にわたる。
生活の場でもある町内会や利用する飲食店、家族や友人との何気ない世間話など。
要は受け止める、あるいは気づくアンテナをどう張っているかでその差は大きいのだろう。
私のような凡人はそのアンテナがなかなか磨き切れていないのか、せっかくのヒントを役立たせる場面はそうめぐってはこないようだ。
そんな私が最近の新聞や読書でいくつか「なるほど」と手を打った記事や一冊があったので紹介する。
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■「市場はお客さん」と受け止めるが、
喜んでくれる人を意識することが大事
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5月25日の朝日新聞朝刊「異才面談」に糸井重里氏が登場している。
以前、同士が手がけて気仙沼市に設立されたニット商品が好調との話を書いた。
紙上でも「被災地気仙沼発の逸品」として紹介されている。
改めて同士は語る。
「いま、被災地の支援と思って買う人はいません。価値のあるセーターがほしいから買う。ものそのものの価値だけでなく、こめられた思い、醸し出す物語といった背景も、大事」
「何かいいらしい、という話題だけでは終わってしまう」とは、言いえて妙である。
なぜ気仙沼なのか。
「もうかる仕組みを気仙沼に届けようと」と取り組んだという。
「市場という言葉は、お客さんという意味で使います。お金を持ってきてくれる人と、喜んでくれる人、その二つの要素がある。喜んでくれる人を意識することが大事」と語っている。
今では数十万部の大ヒット商品になった「ほぼ日手帳」は、利用者の声を集め、毎年改良を重ねているという。
「使う人に喜んでもらえるように考え抜く」という、同氏の商品企画に対する意思が貫かれている。
実際の商品を手にとって見ることができない通販ならなおさらである。
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■日本のディズニーリゾートのおもてなしの真髄とは
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ディズニー流おもてなしを書籍にすると泣ける小説になる
私がよく見る書評サイト「HONZ(ホンズ)」の代表、成毛眞氏が対談した昨年の読売新聞「成毛眞の新読書スタイル」のスクラップ記事を見る。
対談相手はコンサルタント会社「ヴィジョナリージャパン」社長、鎌田洋氏である。
鎌田氏のディズニーランド勤務での体験談を交え実際のエピソードを基にした短編小説「ディズニー おもてなしの神様が教えてくれたこと」を取り上げている。
ディズニーではお客はゲスト、働く人をキャストと呼んでいる。
鎌田氏「ディズニーのサービスと、日本のおもてなしというのがマッチしたのが、日本のディズニーリゾートだと思います」と語っている。
ディズニー関連のノウハウ本やマーケティング本は数多く出版されているが、同氏は「自己啓発本として読めるように書いた」という。
「50過ぎのお父さんが電車の中で読んではいけない本」というキャッチコピーも話題になった。
自律神経がすぐに反応し、やたら泣き上戸になりやすい中高年層は取り扱い注意の本であるらしい。
「大切な思いでは、いつもディズニーと共にあった…」の前書きで始まる同書は、ディズニーのキャストが働くことの生きがいや楽しさ、ゲストとの触れ合いの中で日本らしいおもてな
しの真髄が何気なく語られているようにも思える。
これを機会にほかのディズニー関連本を読んでみたくなった。