• 午前5時半、ワイは夜勤明けでいつものように駅へと向かう帰宅途中……

    「百円ちょーだい?」

    と声をかけられました。
    ハッとして声の方へと顔を向けるとこちらへ歩いてくる黒の膝くらいまである長いダウンコートを着た60~70代の小柄なおばあちゃん。

    真っ白ながらもボリュームのある髪の毛を後頭部でお団子にし、多少背中は曲がっているものの杖をつく事もなく、足を引き摺るでもなくしっかりとした足取りの元気そうなお年寄り。

    「お腹空いてるの。だから100円ちょうだい?」

    え?乞食?物乞い?ホームレス???
    え?え???え???

    物凄く怖くなって脱兎の如く逃げました。
    ごめんなさい。
    おばあちゃんの奇妙なくらい明るい笑顔と、どちらかというと高めの可愛らしい声が、その時は怖くて怖くてたまりませんでした。

    今、電車の中で泣きそう。
    彼女は未来の私かもしれない。
    結婚もせず、貯金もせず、仕事のスキルアップもせず、ただ怠惰に日々を過ごす現在の私の延長上もしくはその結果の姿に見えてしまいました。

    勿論、彼女は私などではなく、彼女には彼女なりの事情があったのかもしれません。
    駆け寄って、100円と言わず、千円でも渡してあげるべきだったのかもしれません。
    後悔ばかりです。おばあちゃんごめんなさい。
    でも、その時は恐怖しかなくて逃げました。

    もうやだ、しにたい……ほんとしにたい
    ごめんなさい