日々

【第61回】1着150,000円のニット商品が人気 気仙沼拠点にネット販売

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■被災地住民による新たな産業おこし
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東日本大震災から4年が過ぎました。
今も20万人以上の被災者が不便な避難所暮らしを続けています。
それでも被災地の各自治体からは、少しずつ地域の復興を知らせる嬉しいニュースが届きます。。

被災地では地元住民による新たなまちおこし、産業が芽吹いているようです。

その一つを紹介してみます。
宮城県気仙沼市でニットのカーディガンやセーターを販売する「気仙沼ニッテイング」です。
商品は主にカーディガンとセーター。
151,200円のカーディガンに75,600円と194,400円のセーターなど、ともに税込で受注生産という。

けして安くない商品ですが先着順、場合によっては抽選でしか手に入らないほどの
人気商品
だそうです。
インターネット販売が中心でしたが、昨年気仙沼に店舗がオープンし、
最近では百貨店の伊勢丹でも販売コーナーがオープンしたようです。

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■地元の習慣を産業に
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気仙沼とニットとの結びつきは、意外なようでそうでもないようだ。

「気仙沼の漁師の家は、男女を問わず編み物をする。漁師は漁で使う網を繕う。長い漁に出かけた家族の帰りを待つ自宅でも・・・・。」(朝日新聞26年11月朝刊より)

その習慣を産業に、との発想はコピーライターの糸井重里さんでした。。

同社のホームページによれば、2012年6月に糸井氏が運営する「ほぼ日刊イトイ新聞」で
震災支援のプロジェクトとして始まり、翌年6月に株式会社としてスタートしたという。

実際に現地で会社を作り、40人ほどの地元の編み手を抱える会社を運営しているのは、
御手洗瑞子さん。
コンサルティング会社のマッキンゼーで被災自治体の産業戦略を考える仕事をしていた経験を持つ。

事業化は単に復興支援、まちおこしではなく地域が自立できる産業にしたいとの思いからだ。
地元で採れた海産物を元に、新たな商品を企画開発するという発想ではない。
気仙沼のニットは一枚、一枚が地元の女性たちによる手編み、受注生産である。
気仙沼ニットという新しいブランド、物語を商品化したとも言える。

同社の商品戦略の要はニットのセーターを一生懸命に編む被災地気仙沼の地元の女性たちの存在です。
ひとりひとりの女性の姿
が思い浮かばれます。
手作りの温かいニット商品にイメージが重なります。
けして安くない商品でも人気があるのは、確かに気仙沼という被災地支援という思いもあるでしょうが、もう一つの理由があります。

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■商品の物語、人の思いを伝える通販
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糸井重里さんが運営する「ほぼ毎日イトイ新聞」の存在です。

「ほぼ日」では、手帳は有名ですが、使用感に優れたさまざまな商品を紹介し、販売されています。
商品化まで徹底した品質検査やデザイン研究、使用感テストなど繰り返し、
読者(消費者)に紹介しています。

なぜ自分たち(ほぼ毎日)がこの商品を取り上げたかったのか、薦めたいのか、
ほぼ毎日の誌上で語っております。
説明がうまいとか、コピーが優れているといったことが理由ではありません。

毎日書かれている糸井氏のエッセイや「ほぼ毎日」が提供する話題や数々の情報を読むことで
ファンになり、信頼感が生まれ、その結果「ほぼ毎日」の言うことなら信用できる、
紹介する商品なら信頼できる、といったファン層、読者が生まれるのです。

こうした消費者との信頼関係で成り立っている通販会社なら、
どんなに競合商品があっても負けないでしょうね。
そんな通販会社ご存知ですか。

いくつもの競合商品から選択して商品を選ぶのは面倒、あの会社が進めるなら安心と、
消費者は自分の代わりに決めてもらいたいのです。
自分の代わりにより確かな専門の立場で決めてもらいたいのです。

会員制通販情報誌で知られる会社やテレビでトップ自ら商品の紹介をする会社も
「ほぼ毎日」と共通するところがあるように思います。
商品そのものに価値を求めるのは当然ですが、店のプロ意識、商品企画のコンセプト、
センス、信頼が価値として売りもの
になっています。
その結果、自分の価値観に合ったものを選んでもらったという気持ちになれるのです。
商品を選んでもらう、商品を企画、作ってもらう、共有すべき価値観があるのです。

モノや価格とは異なる価値観をどこに発見できるのか、競合会社との差異となっていること、それがマーケティングの発想力といえるのではないでしょうか。


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