長電話
母とは遠く離れて暮らしていた時から、同じ市内に住むようになっても
電話で話す方が話しやすい。毎回1時間越えは当たり前。
だけど。
子供の頃から、正直に自分の胸の内を話すと母を悲しませる…と思う事には
本音を明かせなかった。
私が嬉しいと母も嬉しい。私が悲しいと母も悲しい。
話を聞くその表情がとても気になっていたんだと思う。
行き過ぎるくらいに。
決して仲は悪くなく、親友のように冗談や深い話もたくさんしてきたけど、
娘の立場で母に抱いていた寂しく残念な感情や思いを、
正直にぶつけるのが怖くて
以前ちょっとそんなニュアンスを入れて話した時も、やめとけば良かったって
沢山後悔した。
だから電話は少し気がラクで。その分気持ちも伝えやすかったと思う。
夜7時半頃。母から電話。色々ないきさつの中で、
私の中でいつも感じていた思いがあふれ出す。
体調もあったのかもしれないし、もういい加減話さなくてはいけないと
腹が決まったのかもしれない。
悲しく思う事。残念で傷つく事。私はこんな事で悩んだり緊張したりすることを。
正直に話してお願いする気持ち。理解して欲しいという気持ち。
話して母はやさしく言ってくれた。
「わかったよ。そうだよね。ごめんね。」
キッチンを片付けながら、謝らせてしまってなんだか申し訳なかったかな。。。と
気持ちがシュンとし始めたら、
ふいに
申し訳ないんじゃない。ありがたいんだ。
本音を聞いてくれてありがとう。言わせてくれてありがとう。認めてくれてありがとう。
怖かったのは打ち明けた後の罪悪感だったのかもしれない。
感謝に変えていく事で、またそれを伝えていく事で
一時の相手の悲しみも包み込んでくれるほど、大きな感謝を伝えられたら。
そもそも、それは本当に悲しみなのかな?
と疑問がわく。
母は言ってた。
「本心を聞けて嬉しい」
私を覆うおおきな膜のようなものが1枚が剥がれたような気がして
私も嬉しい土曜の夜。
今日の通話時間は1時間21分だった。